BNT162b2(COVID-19 mRNAワクチン)の全国的集団接種@イスラエル

ファイザー社製の新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンであるBNT162b2(コミナティ®︎)の接種が、2021年2月17日より日本においても一部の医療者を対象にスタートしました。世界的にかなり出遅れてはいますし、国民に広く接種するには課題が多いですが、ひとまず始まったことについて安堵しています。

さて、そんな日本を尻目に、イスラエルから大規模接種後の効果を示した論文がNew England Journal of Medicineという臨床医学において極めてインパクトの大きい雑誌に発表されました。

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新型コロナウイルスに対するワクチンの効果が示されたんですね。どんな結果か楽しみです。

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詳細なデータが出されています。一つ一つ解説していきます。

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BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting

NEJM 2021 Feb 24. doi: 10.1056/NEJMoa2101765 PMID:33626250

イスラエルで約60万に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するファイザー社製のmRNAワクチンを接種し、その効果を検証した論文です。はっきり言ってその成果たるや凄まじいものでした(→論文へのリンク)

要約 Abstract

背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの大規模接種が世界的に開始となるにあたり、ワクチンの有効性(effectiveness)は、操作性のない設定で多様な集団における多様な結果について評価する必要がある。本研究では、イスラエル最大の医療機関のデータを用いて、BNT162b2 mRNAワクチンの有効性を評価した。

方法:2020年 12 月 20 日から 2021 年 2 月 1 日までの期間に新規にワクチンを接種した全ての人を調査対象とした。その際に人口統計学的・臨床的特徴に基づいて、ワクチンを接種していない対照者と 1:1 の比率でマッチングさせた。試験の転帰には、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染の有無、有症状のCOVID-19、COVID-19関連の入院・重症化・死亡を含めた。Kaplan-Meier 推定法を用いて、各転帰についてワクチンの有効性をリスク比から 1 を引いた値として推定した。

結果:非接種群と接種群にはそれぞれ596,618人が含まれる。1回目の接種後14~20日目および2回目の接種後7日以上経過した時点での試験アウトカムに対するワクチン有効性の推定値は以下の通りであった。

※ 下記の結果は 1回目の接種後14~20日目の時点→2回目の接種後7日以上経過した時点、の順で記載しています。

  • 新型コロナウイルス感染自体を予防できたか: 46%(95%信頼区間[CI]、40~51)および 92%(95%CI、88~95)
  • 有症状COVID-19の抑制: 57%(95%CI、50~63)および 94%(95%CI、87~98)
  • 入院の抑制: 74%(95%CI、56~86)および 87%(95%CI、55~100)
  • 重症化の抑制: 62%(95%CI、39~80) および92%(95%CI、75~100)
  • 死亡の抑制: 初回投与後14日目から20日目までで72%(95%CI、19~100)

全ての年齢層で、感染そのものと有症状COVID-19の発は有意に抑制できており、複数の疾患がある人では有効性がわずかに低下する可能性があった。

結論:このイスラエルにおける全国的な大規模接種に対する研究において、BNT162b2 mRNA ワクチンがCOVID-19関連の広範囲な転帰に対して有効であることが示唆された。この結果は無作為化試験の知見と一致していた。

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この「方法」の下線部が大事なんです。薬でもワクチンでも「効いた」ということを頑強に示すためには、その薬やワクチンを使用していない人と比べる必要があります。例えば、接種した基礎疾患の多い高齢者と接種していない子どもを比べても意味が薄い(ほぼ無い)ですよね。「接種した基礎疾患の多い高齢者」と比べるべきは「接種していない基礎疾患の多い高齢者」なのです。これを精緻にやってのけた研究なのですね。そして示された効果は文句のつけようも無い結果でした。

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わかりました。正しく比較するということが大事なのですね。

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そうですね。重要なデータなので、ひとまず早急に要約部分のみの訳で公開としますが、逐次更新していきます。

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